【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド】ラスト13分。タランティーノがハリウッドの闇に奇跡を起こす。【映画レビュー】
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が2019年8月30日に公開となりました。
クエンティン・タランティーノが監督を務める9本目の作品。
1969年にハリウッド女優シャロン・テートがカルト集団チャールズ・マンソン・ファミリーに殺害された事件を背景にハリウッド映画界を描いたスリラー映画。
レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの初共演作品としても話題を呼んだ。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』とは
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(以後“ワンハリ)を鑑賞するにあたり必要最低限の知識として、本作は1969年に実際に起こった殺人事件を背景にタランティーノが脚色をした作品であることを知ろう。
シャロン・テート事件の概要を調べてから本作を鑑賞する事を強く勧める。
実際に存在したハリウッド界の俳優・女優・関係者だけでなく主人公の2人を筆頭にフィクションである架空の人物も入り混ざり、1969年のハリウッドを舞台に繰り広げられるストーリー。
タランティーノ自身が幼少期を過ごした60年代のハリウッド黄金期最後の瞬間を郷愁とリスペクトを込め、5年の歳月を費やして脚本を執筆し、監督を務めた。
当時のハリウッドを彼なりの視点で再現しながら、彼の好きなものを全て詰め込んだような本作は、まさにタランティーノ映画の集大成とも言える映画作品となっており、タランティーノ監督作品のファンには堪らない映画であるだろう。
ブラッド・ピット×レオナルド・ディカプリオ
本作はブラッド・ピット(以後“ブラピ”)とレオナルド・ディカプリオ(以後“レオ”)の2大スターの初共演であることも大きく話題となった。
2人は筆者にとっても子供の頃から大好きな俳優であり、初めて観たレオの作品は『バスケットボール・ダイアリーズ』(1996年)であり、彼の演技に感銘を受けた。
そしてブラピの作品で初めて観たのが『セブン』(1996年)であり、この作品はブラピ主演映画の中では今でも一番好きな作品である。
あれから30年以上の時が経ったが、彼らの出演作品はもう何十本観たか分からない。
歳を重ねる毎にどんどん魅力を増してゆく2人にはこれからも期待したいと思う。
そんな現在の映画俳優のトップスターと言える2人の夢の共演は映画ファンにとってはまさに衝撃であり、誤解を恐れずに言うとそれだけで2,000円ほどのチケット代を払って劇場に足を運ぶのに十分な価値となるだろう。
本作では実際に存在しなかったフィクションである「リック・ダルトン」をレオが、「クリフ・ブース」をブラピが演じ、実際に起こったシャロン・テート事件と関わってゆく。
ストーリー
映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』予告 8月30日(金)公開
1969年2月8日、ハリウッド。
かつてテレビ西部劇「賞金稼ぎの掟」で名を馳せた中堅俳優リック・ダルトンは、いつまでもドラマの悪役やゲスト出演といった単発の仕事で食いつないでいた。
相棒のクリフ・ブースは長年リックのスタントマンを務めてきた親友だが、いまや彼にスタントの仕事を回してやる余裕もない。
映画プロデューサーのシュワーズからは「イタリア製の西部劇に出てみないか?」と誘いを受けるも、リックは都落ちのような仕事はしたくないと渋る。
そんな友人を黙って見守るクリフ。
彼もまたTVドラマ「グリーン・ホーネット」の撮影現場でブルース・リーとの揉め事を起こして以来、仕事を干され気味だった。
そんなある日、シエロ・ドライヴにあるリックの自宅の隣には、先頃「ローズマリーの赤ちゃん」を大ヒットさせた売れっ子監督ロマン・ポランスキーと、その妻である女優シャロン・テートが引っ越してきた。
落ちぶれつつあるふたりとは対照的に輝きを放つふたり。
ふたりが引っ越してきた事で再び役者魂が燃え上がるリック。
そして運命の1969年、それぞれの人生を巻き込み映画史を塗り替える事件が起こる──。
まさに映画の歴史を変えた作品(ネタバレ注意)
ここから先はネタバレを含みます。
本作を鑑賞後に読む事をお薦めします。
本作は前述した通りタランティーノの“愛する古き良きハリウッド”を史実とフィクションを織り交ぜながら描かれた作品である。
マカロニウエスタン、美しい女性の生足、ブルース・リーなど彼が好きなものは全て取り入れられている。
そしてラスト13分のクライマックスはまさに“映画史を塗り替えた”と言える驚きの展開となっている。
1969年、運命の日。
まさかシャロン・テートが生き残り、カルト教団である犯人たちをリックとクリフがぶちのめしてしまうとは!
これには筆者も驚いた!
まさに映画史を変えるというフレーズそのものである脚本!
これはハリウッドの闇と言われたシャロン・テート殺害事件を憂いていたタランティーノが「こうであって欲しかった」と願ったもうひとつの未来(結末)であったのだろう。
個人的な感想としては161分というかなり長編である本作は、前半部分は少し無駄なシーンが多く間延びしたように感じてしまった。
ブラピとレオという強烈な存在感を放つ2人がその退屈さをカバーしていたのではないだろうか。
ただ、それを補うかの様なラストの凄まじい展開とバイオレンスアクションはスカッとしてて気持ちよく、観終わった時には不思議な満足感を得ることができた。
全体的には良作と言える作品だと思う。
これはタランティーノ監督作品とはそこまで相性が良い訳ではない筆者の評価であって、タランティーノ監督作品の純然たるファンである方にとっては良作どころか“最高傑作”とまで評価は上がるかも知れない。
今回は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の紹介でした!