【半世界】40歳目前、諦めるには早すぎて、焦るには遅すぎる…。あの頃描いた人生になってますか?【映画レビュー】

 

2019年2月14日公開。

『半世界』は阪本順治の監督・脚本によるオリジナル作品で、今まで映画化できず温めてきた2つのテーマを一つにし映画化した作品。

とある地方都市を舞台に炭火焼職人の主人公とそれぞれの人生を歩んできた同級生2人が人生も半ばを迎え残りの人生と向き合っていく。

 

 

ストーリー 


『半世界』予告編|Another World - Trailer HD

 

とある地方都市。

そのさらに郊外に暮らす高村絋とその妻・初乃、息子の明の家族は、父から受け継いだ山中の炭焼き窯で備長炭を製炭することを生業としている。

f:id:zel_8bit:20190217204134j:plain

中学からの旧友で、自衛隊員として海外派遣されていた沖山瑛介がある日、何の前触れもなく、町へ帰ってきた。

どうやら瑛介は妻子と別れて故郷に一人戻ってきた様子。

絋は、同じく同級生で中古車販売を自営でやっている岩井光彦にも声を掛け、十数年ぶりに3人で酒を酌み交わす。

f:id:zel_8bit:20190217204122j:plain

翌日、廃墟同然だった瑛介の実家を掃除し、住める状態にする3人。

海外での派遣活動で瑛介が何か心の傷を負ったのでは?それが妻子との別れ、故郷に戻ってきた原因になったのではないかと、感じる絋と光彦だが、直接聞くことははばかられ、どうすることもできない。

f:id:zel_8bit:20190217204224p:plain

絋の息子、明は反抗期の真っ最中で、どうやら学校でいじめも受けている様子だが、絋はそれに頓着していない。

「おまえ、明に関心もってないだろ。」それが、あいつにバレてんだよ」鋭いことを光彦に言われ、絋はハッとする。

数日後。「俺の仕事、手伝えよ」と、過去から脱却できずにいた仕事のない瑛介を巻き込んで一年発起する絋。

炭材のウバメガシをチェーンソーで伐採し、枝打ちし、短く切断する。窯に火を入れ、炭を掻き出しては灰を掛け、それを何度も繰り返す…。

f:id:zel_8bit:20190217204204j:plain

「こんなこと、一人でやっていたのか」と絋の仕事ぶり見て驚く英介。

これまで感じたことのない張り合いを感じ始めた絋。

そんな父を見る明の目にも、変化が現れかけ、それは何もかも順調に向かい始めているように見えていた…。

 

主要登場人物

高村絋:稲垣吾郎

f:id:zel_8bit:20190217172626p:plain

父親の家業である製炭職人を継ぎ、生業としている。

嫁と息子がいるが、最近仕事の方も上手くいかず家族ともギクシャクしている。 

旧友3人組のひとり英介が帰郷し、色々と世話を焼く。

 

沖山瑛介:長谷川博己

f:id:zel_8bit:20190217172706p:plain

旧友3人組の一人。

中学卒業と同時に自衛隊に入隊。

39歳の時、除隊し、妻子と別れ故郷に帰ってきた。

 

岩井光彦:渋川清彦

f:id:zel_8bit:20190217172801p:plain

地元で中古車販売業の家業を父親と共に営んでいる。

おちゃらけた性格ではあるが、旧友3人の中では一番冷静であり良き潤滑油となっている。

 

高村初乃:池脇千鶴 

f:id:zel_8bit:20190217172819p:plain

絋の妻。

無口な夫と反抗期の息子の間で悩んでいる。

おっとりした性格だが、芯の強いところもある。

 

『半世界』という映画

f:id:zel_8bit:20190217204305p:plain

とある地方都市を舞台に炭火焼職人の主人公とそれぞれの人生を歩んできた同級生2人が人生も半ばを迎え残りの人生と向き合っていく。

グローバリズムとはまた別のもう一つの世界が描かれている。

f:id:zel_8bit:20190217204349p:plain

地方都市に焦点を当てたドメスティックな物語は、阪本順治監督が自ら書き下ろしたオリジナル脚本だ。

そこに、世界は市井の人々の小さな営みでできているという監督の視点が込められている。

f:id:zel_8bit:20190217204329p:plain

諦めるには早すぎて、焦るのは遅すぎる39歳という年齢の男3人の友情物語を軸に、複数のエピソードを交えながらやがて命の通った夫婦のドラマとしても結実していく。

人生半ばに差し掛かった彼らが、次の人生へどう折り返すかを描きながらも、人は生きて死ぬ、だからこそ際立つ刹那な幸せをスクリーンに照射させたドラマである。

 

感想

f:id:zel_8bit:20190217205236p:plain

本作はキャストの演技も素晴らしく、特に稲垣吾郎のは「え?SMAPの時と全然印象が別人…」と思うほどでした。

彼は実年齢45歳だそうですが、これ程までに自分の年齢に近い役柄を完璧にこなせるとは思いませんでした。

SMAP時代は別にそこまでではありませんでしたが、この作品を見てからは一気にファンになり、次の彼の作品もぜひ観てみたいと思うほど好きになりました。

f:id:zel_8bit:20190217205041p:plain

そしてもう一人忘れてはならないのが長谷川博己です。

以前から様々な作品に出演して名俳優と謳われてきましたが、今回も”過去を背負った傷ついた大人”という難しい役柄を完璧に演じており、作品をひと味もふた味も奥深いものにしていました。

f:id:zel_8bit:20190217205154p:plain

この作品は年齢層を選ぶと思います。

筆者もそうですがアラフォー世代の、特に男性であったら心の奥に突き刺さること間違いなしです。

逆にまだ若い方はいまいち共感できないんじゃないかなぁと思ったりしました。

f:id:zel_8bit:20190217205210p:plain

40歳といえば人生も折り返し地点です。

今の自分は、若い頃なりたかった自分の姿ですか?

これからの人生はどう過ごしますか?

そんな問いかけを劇中から投げかけられているような気持ちになります。

f:id:zel_8bit:20190217205356j:plain

がむしゃらに生きてきた人生の前半戦。

一度立ち止まって振り返り、ゆっくりとこれからの後半戦の過ごし方を考えてみても良いのではないでしょうか?

鑑賞した方々の、そんなきっかけになる作品になれば良いなと思います。

今回は『半世界』の紹介でした。

このサイトについて|プライバシーポリシー