【すばらしき世界】この世界は生きづらく、あたたかい──。実在した男をモデルに「社会」と「人間」の今をえぐる問題作。【映画レビュー】

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2021年2月11日に『すばらしき世界』が公開されました。

佐々木隆三の長編小説『身分帳』を原作にした映像化作品であり、実在の人物をモデルに、13年の刑期を終え出所した元殺人犯の男の苦労と生きざまを描く。

監督・脚本は『蛇イチゴ』で監督デビューをした西川美和。

主演の元殺人犯三上正夫を役所広司が演じる。

 

ストーリー


映画『すばらしき世界』本予告 2021年2月11日(木・祝)公開

 

下町の片隅で暮らす三上は、見た目は強面でカッと頭に血がのぼりやすいが、まっすぐで優しく、困っている人を放っておけない男。

しかし彼は、人生の大半を刑務所で過ごしてきた元殺人犯だった。

殺人を犯し13年の刑期を終えた三上は、目まぐるしく変化する社会からすっかり取り残され、保護司・庄司夫妻の助けを借りながら自立を目指していた。

そんなある日、生き別れた母を探す三上に、テレビディレクターの津志田と女プロデューサーの吉澤が近づいてくる。

彼らの真の目的は、社会に適応しようとあがく三上の姿を番組で面白おかしく紹介することだった。

やがて三上の壮絶な過去と現在の姿を追ううちに、津乃田は思いもよらないものを目撃していく。

まっすぐ過ぎる性格であるが故にトラブルの絶えない三上だったが、彼の周囲にはその無垢な心に感化された人々が集まってくる。

 

鬼才・西川美和と豪華キャスト陣が贈る衝撃の問題作

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『蛇イチゴ』で原案・監督デビューを果たし、『ゆれる』『ディア・ドクター』などで数多くの映画賞を受賞し、今や日本映画界で最も新作が待ち望まれる監督のひとりとなった西川美和。

これまで一貫して自身の原案、オリジナル脚本に基づく作品を発表してきた西川監督が、直木賞作家・佐木隆三のノンフィクション小説「身分帳」に惚れ込み、長編映画としては初の原作ものに挑んだ意欲作。

主演を務める役所広司は本作で第56回シカゴ国際映画祭にて最優秀演技賞と観客賞を受賞。

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共演に仲野太賀、長澤まさみ、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、安田成美らが名を連ね、名実ともに豪華なキャスト陣が西川監督のもとに集結した。

人間がまっとうに生きるということはどういうことか?

そもそも社会のルールとは正しいのか?

我々が生きるこの世界は“すばらしき世界”なのか──?

本作は一度社会のレールを踏み外してしまった人間に対する厳しすぎる現在の日本のリアルと人の暖かさを描く社会派ドラマである。

 

感想

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特別なことは何一つ起こらない。

生き別れの母親も見つからないし、極道時代の兄弟分に逢っても虚しさが募るだけ。

堅気になろうと懸命にがんばるが、一度犯罪を犯した自分に世間は冷たく、間違った事を許せなく悪を見逃せない性格のためトラブルが絶えない。

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でも諦めず、少しずつでも成長し、前に進もうとする三上を信じて助けてくれる人たちとの出会いが三上の人生に光を灯してゆく。

ドラマチックな展開は皆無であるのに、126分という上映時間ひとときも目を離すことのできない濃厚な作品でる。

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稀代の名優・役所広司の怪演が光り視聴者を釘付けにする。

筆者は1987年の『三匹が斬る!』から30年以上の役所広司のファンであるが、この俳優は歳を重ねるほどに本当に素晴らしい演技を見せてくれる。

今作でも主人公三上の「葛藤」「怒り」「哀しみ」「優しさ」「迷い」などを見事に演じており素晴らしいの一言に尽きる。

共演するメンバーも豪華実力派が揃っており、大人にこそ観て欲しい文句なしでお勧めできる作品である。

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