【YESTERDAY(イエスタデイ)】昨日まで、世界中の誰もが知っていたビートルズ。今日、僕以外の誰も知らない──。【映画レビュー】
『イエスタデイ』が2019年10月11日に公開となりました。
ダニー・ボイルが監督を手がけるファンタジー・コメディ映画。
ビートルズが消えてしまった世界で、唯一その曲を知る存在となった1人のシンガー・ソングライターの活躍を、ビートルズの名曲の数々に乗せて描く。
主演をヒメージュ・パテルが、ヒロインをリリー・ジェームズが務める。
ストーリー
イギリスの小さな海辺の町サフォーク。
シンガーソングライターのジャックは、幼馴染で親友のエリーの献身的なサポートも虚しくまったく売れず、音楽で有名になりたいという夢は萎んでいた。
ついに夢をあきらめた日、12秒間、世界規模での停電が発生。
真っ暗闇の中、交通事故に遭ったジャックが、昏睡状態から目を覚ますと…。
史上最も有名なバンド、ビートルズが世の中に存在していない!
世界中で彼らを知っているのはジャック1人だけ!?
ビートルズの存在が消え去った摩訶不思議な状況の中、ジャックは記憶を頼りに楽曲を披露するようになる。
すると、ライブは大盛況、SNSで大反響、マスコミも大注目!
さらに、曲に魅了された超人気ミュージシャン、エド・シーランが突然やって来て、モスクワでの彼のツアーでのオープニングアクトを任されることに。
エドも嫉妬するほどのパフォーマンスを披露すると、ついにメジャーデビューのオファーが舞い込み、ジャックはロサンゼルスへと向かう。
思いがけず夢を叶えたかに見えたジャックだったが──。
登場人物
ジャック(ヒメージュ・パテル)
イギリスの小さな海辺の町に住むインド系イギリス人の青年。
シンガー・ソングライターとして活動しているが全く売れず夢を諦めかけていた。
エリー(リリー・ジェームズ)
ジャックの幼馴染であり、彼のマネージャー兼ドライバー。
献身的に彼の音楽活動を支える親友。
エド・シーラン(本人)
数々の楽曲でセールス新記録を樹立し、ライブでも記録的な人数を動員する21世紀を象徴するアーティスト。
ジャックの楽曲に魅了され、自らのライブのオープニングアクトに彼を抜擢する。
デブラ(ケイト・マッキノン)
冷酷で凄腕の女性エージェント。
ジャックと契約を交わし、彼を商業的に大成功させるようプロデュースするが…。
感想
全編に溢れるビートルズへのリスペクト。
ダニー・ボイル監督は本作について「これは、ビートルズへのラブレターだ」と語っている。
“もしもビートルズが存在しない世界で、自分の頭の中だけにその楽曲の全てがあったとしたら…”
こんな発想、面白いに決まってる!
ビートルズと言えば世代ではない若者でもその楽曲を知っている、世界で一番有名かつ成功したバンドである。
その数々の名曲がファンタジー・コメディのストーリーを軸に展開する物語の中でこれでもかと流れる。
それだけでも満足なのに、さらに登場人物たちが魅力に溢れている!
主人公のジャックを筆頭に、幼馴染のエリーや悪友のロッキー、そしてまさかの本人が演じる天才アーティストのエドなど、愛すべきキャラクターたちが“ビートルズのいない世界”で“ビートルズの曲に振り回される”物語は笑いあり、そして感動ありの極上のエンターテイメントだ。
そして筆者のイチオシはエリーを演じるリリー・ジェームズの可愛らしさである。
彼女の表情はどれもとてもキュートであり、その一挙一動に完全に見惚れてしまうだろう。
あんな娘が献身的にマネジメントをしてくれるなら絶対に頑張ろうって思える(笑)。
そして物語の終盤、ジャックは成功と引き換えに失ったエリーへの想いに気づき、その成功も自分のオリジナルではなくビートルズの曲であるという罪悪感に苛まれる。
その時彼が出逢ったのは…
ミュージシャンにならなかったため暗殺を免れた78歳のジョン・レノンだった。
「よく、生きていてくれました…」
自らもビートルズの大ファンであったジャックは彼を抱きしめる。
年老いたジョンから先立たれたヨーコと過ごした時間が、自分の人生にとって何ものにも代え難い宝物だという言葉を聞き、“本当の幸せとは何か?”を知る場面は2019年上映の映画の中でも最高のシーンだと筆者は思う。
今回はビートルズを愛して止まない人にも、あまり知らない人にも、全映画ファンにお薦めしたい最高のファンタジー・ラブ・コメディー『YESTERDAY』の紹介でした!